一日一甘四季折々、お菓子のはなし・私の旬な話題など   [ 過去の記事 2 1 ]

月見団子

白玉の冷たい汁粉
月見団子
 旧暦八月十五日は十五夜で、今年は九月十九日が満月にあたります。
 台風が過ぎた空はにわかに秋の気配をただよわせ、大きな明るい月が浮かんでいました。豆腐と白玉粉で我が家風の月見団子をつくりました。新粉のものよりもちもちして、時間が過ぎても固くなりません。
 お供え団子は甘味をつけていないので、ゆで小豆を添え、大豆つながりで豆乳を加えた冷たいお汁粉にしました。
 おろししょうがを加えたら、ベトナムで食べたチェーの味を思い出しました。
13/9/18
和菓子教室
 和菓子教室をはじめました。といっても、近所の地区センターでごくごく、ささやかに。今までお菓子や料理の本をいくつか編集してきましたが、人に教えるのって難しい! でも楽しい! 発見がたくさんありました。
 たとえば、はじめてのときは、だれでもちょっと、おっかなびっくり。混ぜるのも、切るのも、とてもゆっくりになります。力加減、混ぜ加減は人それぞれ。レシピ本でどこまで伝えられていたかな……と反省しきりです。
 お菓子は「ふきのとう」。茗荷谷の一幸庵のものです。
10/2/1
飴細工 落ち葉
 京都の和菓子屋さんの飴細工です。指の先ほどの大きさで、ぱりんと割れてしまいそうに繊細な作りです。
 できることなら、ブローチにしたい、いやいや、帯止めか……。
 最近、きものに凝っていて、ネットやらお店やらで、ずいぶん買ってしまいました。もっとも私が買うのは、安いものばかりですけど。母とか祖母のお下がりもあり、気づいたらディノスで買った整理箱がいっぱいになっていました。
 知り合いにも、きものに凝った人が何人もいて、退職金をはたいたとか、浅草の古着屋をめぐっているとか、さまざま聞きました。そのときは、「どうして?」と思ったのですが、きものは特別。魔力のようなものがあるんですね。
 私の場合は、手仕事が好きなんです。刺繍、染め、織り。和菓子も手仕事の美しさです。
紫野源水
07/1/13
讃岐和三盆
 松竹梅に鶴亀、菊とおめでたい絵柄の讃岐和三盆です。初春らしい、やさしい色合いです。和三盆は口に入れると、すうっと溶けていきます。はち蜜の甘さ、干し柿の甘さ、すいかの甘さ、甘さにもいろいろあるけれど、和三盆はその一番上等のものだという気がします。
 そのまま食べてもおいしいけれど、コーヒーに添えてもいいものです。コーヒーの香りを邪魔しない。でも、ちゃんと自分の主張もしている。しなやかで強いと思います。
 これは、昨年初夏たずねた三谷製糖のものです。江戸時代から伝わる伝統の作り方です。香川といえば「うどん」ですけれど、行ってみると、なるほどおだやかで、おおらかなところです。質素だけど、豊かな土地。和三盆は、こういう土地で育まれたのだと実感しました。
三谷製糖
07/1/12
やしょうま
 長野の鹿教湯温泉に行きました。静かないい旅館でした。透明なやわらかなお湯で、温まります。夜はきのこ鍋でした。
 そこに行く前に、せっかくだからと地元の方にお願いして教えてもらったのが、郷土菓子のやしょうまです。米の粉を蒸したもので、まあ、いってみればお団子の親戚ですね。ほんのり甘い、素朴な味です。本当は、4月の花祭り、つまりお釈迦様の誕生日ごろに作るものです。一説によれば、生地をぎゅっと握った感じが、やせ馬に似ているところから、この名がついたともいわれています。
 金太郎飴とか、飾り寿司と同じように、最初は太く作ってだんだん細くのばしていきます。難しいのは、茎と葉っぱの部分ですね。花びらはむしろ簡単。紫の色がやさしく、かわいらしいお菓子です。花だけでなく、いろいろな絵柄がありました。
06/12/20
黄金芋
 「和菓子の歴史と老舗めぐり」の皆さんと、人形町に行きました。
 レトロな雰囲気のお店が、ここかしこに残るのが人形町です。
 黄金芋の壽堂も、明治17年創業。がらがらっと戸を開けると、タイムスリップした気分。私が行ったときは、本物そっくりに作った、ねりきり製の落ち鮎が飾られていました。
 人形町は、下町発生の地です。江戸幕府が開かれると、日本橋から人形町にいたる一帯に、商人や職人が集まって城下町が生まれました。江戸城下町が略して、下町といわれるようになったのです。
 日本橋には魚河岸、人形町には中村座、市村座の歌舞伎小屋、さらに少し歩くと吉原がおかれ、早朝から深夜までにぎわったのです。
 黄金芋は、見かけは焼き芋そっくり。でも、白あんで作ったお菓子です。ニッキの香りがほんのりします。
壽堂 03(3666)4804
06/11/07
梅むらの豆かん
 4月から「読売文化センター町屋」で、和菓子の教室を持つことになりました。といっても、みなさんを案内して、お菓子屋さんをめぐるわけです。ちょっと歴史の話とかもします。
 そもそも私は方向音痴なので、道を間違えずに案内できるかが一番の心配です。下見に行って、曲がる角を記憶して……。距離が長すぎたりすると店を変えます。そうすると、もう道順が違う。歴史の話まで、なかなか気持ちがいけないのですよ。
 これは、5月に行った浅草・梅むらの豆かんです。
 この店の豆かんに出会うまでは、私は豆かんを食べたことがありませんでした。だって、普通はあんみつを頼むでしょう。豆かんなんて、意味がわからないとまで思っていました。でも、この店の豆かんを食べて、びっくり。つやつや、ふっくらとやわらかいえんどう豆がぎっしりのっていて、積極的においしい。豆のついでに、寒天とか、黒蜜があるわけですよ。どうやって煮ているんだろう?
梅むら  03(3873)6992
06/07/10
亀十のどらやき
 雷門のすぐ前にある、浅草名物のお店です。
 いつもは仲見世を通って浅草寺でおまいりして、また同じ道を通って戻ってくるのですが、この日はちょいと横道に行きました。そうしたら、町の匂いが突然かわった。修学旅行生と外人がいっぱいの仲見世は、浅草のよそ行き顔なんですね。演芸場あたりの、なんかまったりした、女物のサンダルはいたおじさんが自転車に乗っているような、あそこがへそですな、浅草の。
 このどらやきには、そういう浅草のふだんの顔があります。皮はふかふかして、あんこはたっぷり。
 この町で育った味という感じがします。
亀十  03(3841)2210
06/07/10
マダム・ヨーコのチーズスフレ
 今日、玉川高島屋に寄ったら、このお菓子が売っていました。大阪から来て、今日までというのです。買うしか、ないじゃないですか。
 生地は指につくほどしっとりとして、やさしい甘さで、口の中でふわーっと溶けてしまいます。
 中のクリームはフランス『キリ社』のフレッシュチーズだそうです。こちらも、ごくやわらかく、まろやかな酸味があります。
 スフレと聞いて思い出すのは、オードリー・ヘップバーンの『麗しのサブリナ』です。パリに遊学したサブリナがお料理学校で習うのですが、失敗ばかり。膨らまなかったり、シューンとしぼんでしまったり。映画を見ながら、スフレってどんな味なんだろうって思っていました。
(株)フラワー マダム・ヨーコ事業部  0729(57)4412
05/01/25
アマンド
 取材で恵比寿の「トシ・ヨロイヅカ」に行きました。スイス・オーストリア・フランス・ベルギーで約7年半の間腕を磨いた、鎧塚俊彦さんという気鋭のパティシエのお店です。
 フランス菓子の店は多いけれど、ベルギー、スイス、オーストリアというのはめずらしい。お店に入ると、ほかとは一味違うお菓子が並んでいました。一番人気というのが、このアマンドです。アーモンドと卵黄がぎゅ〜っと入って、いかにも北国育ちという凝縮した味わいです。そーですね、フランス生まれのマドレーヌの従姉妹で、ほっぺたが赤くて、足が太いけど、とっても素直で、物理専攻っていうイメージでしょうか。
トシ・ヨロイヅカ  03(3443)4390
05/01/25
柿中柚香(かきなかゆうか)
 あんぽ柿の中に、さっぱりした柚子あんを詰めています。私は干し柿のひなびた、懐かしい味が大好きです。とくにあんぽ柿というのは、みずみずしさと枯れた甘さが同居していて、風雅な味わいがあります。晩秋の気を許すと、すぐ翳ってしまう太陽や、透明で冷たい風が育んだおいしさなんですよね。柚子あんの香りもほどよくて、和菓子の新しいおいしさでした。広島の共楽堂という和菓子屋さんが作っています。この店は、マスカットを求肥で包んだり、柿ようかんに仕立てたり、フルーツ使いが得意らしい。
共楽堂  0848(62)4097
05/01/25
艶干錦玉(つやぼしきんぎょく)と味噌せんべい
 先日、和菓子研究家、金塚晴子さんのお教室の生徒さんを対象に、和菓子の歴史のお話をしました。場所は、横浜郊外「寺家ふるさと村」。たんぼに里山、鎮守の森、昔ながらの美しい風景が保存されている所です。和室の床の間にはむくげの花が飾られ、耳をすますと蝉しぐれが聞こえてきます。生徒さんが楽しみにしていたのは、歴史話というよりも、和菓子です(私もでしたけど)。艶干錦玉は、寒天を干して表面をしゃりっとさせたもので物思う秋にふさわしく、少し沈んだブルーです。「艶干錦玉」という、歌舞伎の題名のような名前もいい響きです。味噌せんべいは、すすきの焼き印でした。こんな風にきれいにせんべいを割いたり、どれもまったく同じに焼き印を押すのは、職人の技です。
太市(たいち)  03(3712)8940
04/09/20
葛焼き(くずやき)
 岬屋さんの葛焼きです。淡い葛の香り、小豆の風味があって独特のもっちりとした食感がある。表面の焼きの表情もかわいらしい。
 地味なお菓子だけれど、よく見ると作家ものの器をながめているような楽しみがあります。
 葛は時間とともに、おいしさが消えてしまうのです。
岬屋  03(3467)8468
04/09/20
着せ綿(きせわた)
 9月9日重陽(ちょうよう)の節句の前日に、菊の花に綿をかけて露を移し、それで顔や体をぬぐうと長寿になるという言い伝えがあるそうです。ピンクの練り切りの上にふわっとのっている白いものは、綿に見たてた山芋のそぼろです。中は黄身あん。練り切りなどの和菓子が完成するのは、江戸中期。公家や武家、裕福な町人たちがお茶を楽しむサロンも盛んでした。菊の露で長寿になるなんて、そのころからだれも信じていなかったのではないかしら。つまりは、故事にちなんだ遊び。江戸は遊びの名人です。
へちま
04/09/20